箱の中の木造 すくすくリノベーションvol.17

箱の中の木造 ビフォーアフター<概要>(ワンストップリノベーション)
場所:東京都狛江市
延べ面積:82.6平米
構造:壁式RC造

できるだけ木造の雰囲気の中で暮らしたいという4人家族のためのマンションリノベーションです。

住戸があるのはRC造のマンション内ではありますが、柱型のない壁式構造で壁厚もあり窓枠の見込みが大きいため比較的木造の雰囲気は出しやすく、しかも住戸内にはRCの間仕切りがないため間取りの自由度も高めでした。

2階で隣地の木などが見えるのも雰囲気づくりにプラスに働いています。

プランとしては水回りの位置は大きく変えず、将来二人のお子様の部屋にできる家族寝室をリビングを通ってアクセスできる位置に設け、ダイニングとリビングの間にワークスペースを挟んでL字型にして少し距離感を持たせました。

L字の入隅部分には角の見切りとして檜の柱を入れ、サッシ枠は雲杉の無垢材に変更し木製の内窓を入れて、いわゆるマンションっぽさを消しています。

玄関は上がり框の間口を当初より広げ戸建て並みの1200mmとすることで出入りの際のストレスを軽減させ、廊下部分との幅の差を活かして手洗いを設置しています。

箱の中の木造 LD

リビングダイニングに囲われるように位置する家族寝室は、建具の上を欄間にしてダイニング、キッチン側に天井からの光が反射するようになっています。

リビングの窓際にはハンガーパイプを設け、床は塩ビタイルとしてインナーテラスのようにしています。

箱の中の木造 スタディスペース

ワークスペースは窓から離れ落ち着いたコーナー部分にゆったりと設けています。

箱の中の木造 子ども部屋

奥の部屋は将来的には夫婦寝室になりますが、当面はキッズスペースとして活用されます。

箱の中の木造 スタディスペースから

本棚は両面から使えるたっぷりサイズで、スタンディングデスクとしても使いやすい高さになっています。

箱の中の木造 LDK

テレビ下の収納、本棚、ダイニングのカウンターといった水平の要素と檜の柱や側板といった垂直の要素を散りばめて生成りベースの室内に柔らかめのアクセントを加えています。

箱の中の木造 リビング

フローリングは無垢のナラにクリアオイル塗装になっています。

箱の中の木造 リビング

サッシ枠の見込みが大きいため、内窓を入れてもまだ枠がしっかり見えて木サッシを入れた木造の雰囲気が感じられます。

箱の中の木造 家族寝室

家族寝室の入り口は将来二部屋に分割できるよう引き分けとなっています。

火災警報器も2室になることを想定した設置になっているので、分割した際に防災工事を入れる必要はありません。

箱の中の木造 玄関方向

リビング入口は引き込みの引き戸で開放時は存在感がなくなり、通風のコントロールがしやすくなります。

箱の中の木造 キッチンからダイニング

キッチンパネルはホーローで床は塩ビタイル。

壁付きのI型キッチンですが、開放感はあるので家族の雰囲気は感じられます。

箱の中の木造 キッチンからWIC

キッチンの奥には引き戸がありますが、開放するとウォークインクローゼットの窓までつながりじゅうぶんな通風が確保できます。

キッチンから見るダイニング。

箱の中の木造 玄関手洗い

玄関ホールの手洗いはある程度しっかりした大きさのものを選び、水しぶきが気になりにくくなっています。

水栓は壁出しでカウンター周りのメンテナンスもしやすくなっています。

箱の中の木造 玄関

上がり框の幅を1200mm確保し、スムーズな出入りができるようになっています。

入ってすぐのトイレのドアは周囲の壁と同じシナとして目立たなくしています。

箱の中の木造 玄関収納

シンプルな作りの玄関収納はコンパクトながらもしっかり容量があります。

箱の中の木造 WICから

窓のあるウォークインクローゼットは日中は明るく風通しも良いです。

この部屋だけ床は既存のままになっています。

箱の中の木造 洗面脱衣室

もともと1620サイズのユニットバスだったのを1416までコンパクトにして、その分洗面脱衣室にゆとりを持たせています。

ここからはビフォーアフターです。中央の矢印をスライドすると違いがわかります。

玄関

ダイニングから家族寝室

リビングダイニングと家族寝室

リビングダイニングと予備室

ウォークインクローゼット

overstory すくすくリノベーションvol.16

<概要>(リノベーション)
場所:神奈川県川崎市
延べ面積:109.3平米
構造:木造2階建て

丘の一番高いところ建つ趣のある2階建ての木造戸建てをリノベーションしました。
敷地にはモミジや木蓮、柿の木などが立っており、窓からは多くの植栽が見えるのに加え、2階に上るとは東にはスカイツリーが、西には富士山が見えるという、まるで高木の樹冠の上のような住宅です。

元の住宅は1階2階共に段差と仕切りが多めで少々使いにくい造りになっていたので、段差解消と家全体の見通しを良くしつつ、断熱性能と耐震性能を向上させました。

意匠的には元の雰囲気が気に入って購入したとのことでしたので、活かせるところを活かしつつ左官の壁をベースに全体をまとめました。

玄関ポーチ

玄関周りは元々木製のドアにシングルガラスのカーテンウォールとなっており、断熱的には厳しい仕様でしたので、全面をペアガラスに変え、木製ドアは断熱仕様で作り直しました。

玄関は吹き抜けとなっています。

元の玄関は土間が狭かったので、柱を抜いて梁補強をした上で全体的に広げ、奥に靴のまま入れる収納を設けました。

玄関から玄関収納

玄関収納の奥には元の和室の床の間にあった小さな地窓に加えてFIX窓を追加し、日中は照明を点けなくても利用できるようになっています。

玄関収納のハンガーパイプ

収納内のハンガーパイプですが、玄関から見えるということもあり左官のテクスチャーに合う亜鉛メッキ仕上げで製作しています。

玄関から洗面方向

玄関から屋内方向の木の壁は元のままですが、床の高さを元より下げているので高さのある木製巾木で足元をカバーし、塗装で馴染ませています。

リビング入り口から

リビング入口からの様子です。

左がリビングで、もともと小さなバルコニーが付いていましたが建築面積に余裕があったため広いウッドデッキに造り変えました。

中央の柱は移動すると大掛かりな補強が必要になるような梁のかかり方をしていて、ちょうどダイニングテーブルが入るスペースが確保できることもありそのまま残しています。
テレビのある面が南で、元は掃き出しの引違い窓がついていましたが、東のウッドデッキに出る窓で十分な明るさが確保できるので高さ方向を縮めて柿の木の枝がちょうど見えるくらいにしています。

リビングの木の天井は元からのものです。

1階床段差

工事中、スケルトン時の1階です。

右手小上がり、手前リビング、奥の玄関が全て違う高さになっているのがわかります。

1階床レベル揃えた状態

リビングの床を上げ、廊下の床を下げ段差は小上がりだけとなりました。

リビングと玄関

リビングとウッドデッキは同じ高さでつながっているため一体感のある使い方ができます。

全体的に床の高さを揃えましたが、奥の和室だけは小上がり風に使うために高さを変えていません。

テレビ台

テレビ台は杉の梁材を壁に埋めて片持ちとしています。

リビングのビフォーアフターです。

LDK部分の床は当初より上げており天井高さが当初より相対的に低くなっていますが、外への開放感があるために圧迫感などはありません。

リビングと繋がるウッドデッキ

ウッドデッキの範囲内には柿の木と木蓮があり、取り込むような形でデッキを造作しています。

敷地が南に向かって傾斜しているので1階のデッキですが隣地の2階以上の高さがあり、プライバシーと日照が確保できています。

デッキは擬木などは使わず、杉を高温処理で腐朽しないように加工したメンテナンスフリーのデッキ材を使用しています。

リビングの入口は大判の引き込み戸となっており、空調のいらない季節は開放して階段部分と一体感が出るようにしています。

前の持ち主が置いていったベンチ

以前の家主が置いていったベンチが良い味を出していたので引き続き利用することになりました。

小上がりからLDKを見る

小上がりは柱や障子、天井は元のままで壁と畳とサッシだけ刷新しています。

ダイニングとキッチン

ダイニングとキッチンです。

キッチンはL字型でレンジフード以外の吊戸類を付けないことで天井が伸び、広々と感じるようにしています。

LDKビフォーアフターです。

リビングとダイニングキッチンの間仕切りをなくしたことでリビングの木天井の境が中途半端になるため、リビングの入口まで範囲を狭めています。

建具枠と天井切り替えの取り合い

建具枠と天井切り替えの取り合いです。

ダイニング側の天井は廊下と合わせ、リビングの既存天井との段差を真鍮のフラットバーで吸収しています。

キッチンのビフォーアフターです。

南面の窓はキッチン作業中に木が綺麗に見える位置で開口を取り直し、西窓は4枚建ての引違いを2枚建てに変更してよりすっきりと見えるようにしています。

梁がたわんできてたこともあり、窓の中心に柱を追加して補強しています。

キッチン

キッチン本体での収納量があるので、背面はオープン棚のみでコストを抑えています。

キッチン前の収納

ダイニングテーブルの奥の部分は収納となっています。

ツマミ等の金物はFORMANIのFERROVIAシリーズで統一しています。

2階もフロア内の段差を吸収するために階段の上りきりの高さを高くしたため、階段の段数を増やす必要があり途中から新設しています。

階段の新旧切り替え

階段の新旧切替部分。新しい段板は無垢のホワイトオークです。

ファミリースペース

2階に上がった部分はオープンなファミリースペースとしています。

将来的に柱の位置で壁を作って個室にもできるようにコンセントやスイッチを露出配管で柱に添わせています。

2階床段差

2階工事中です。

左側廊下部分と奥の部屋が床が高くなっています。

廊下部分は当初かなり傾きもあったので梁から掛け直して水平をとり、2階の基準高さとしています。

2階断熱の様子

2階の奥の部屋の床を上げている工事中写真で、既存の床にフリーフロアで施工しています。

断熱は壁は20kのグラスウール105mm、屋根は垂木間にウレタンボード100mm + 垂木下にスタイロフォーム30mm、床はウレタンボード61mmとしています。

ファミリースペースのビフォーアフターです。

元の窓は高めで素晴らしい眺望が今ひとつ活かされていなかったので、下屋を壊してルーフデッキにして外に出て景色を楽しめるようにしました。

東面の窓は撤去して左官のゆったりとした壁をつくり空間を少し落ち着かせています。

富士山が見えるルーフデッキ

ルーフデッキからは天気が良いと富士山が見えます。

ファミリースペースの柱

ファミリースペースに残した柱には新築当時の手書きの通り芯番号が残っています。

ファミリースペースから寝室

ファミリースペースから寝室側を見るとモミジが見えます。

寝室

寝室の壁は塗装下地用のクロスになっていて、当面は落書きできるようになっています。

スカイツリーが見える窓

寝室の北側の窓は小さいながらもモミジの葉が落ちるとスカイツリーが見えます。

寝室の柱

寝室の現した柱は切り欠きに合わせて大工が埋木を施しました。

WICスケルトン時

2階の奥の、もともとデッドスペースだった床のない部分をウォークインクローゼットとして活用しています。

天井裏を活かしたウォークインクローゼット

とても味のある丸太梁があったのでそのまま現しています。

洗面、風呂

トイレ

1階の水周りは位置は基本的に変えずに刷新しています。

庭見る小居 子育て世代の家づくり

プラン
<概要>(新築)
場所:東京都目黒区
延べ面積:82.49平米
構造:木造2階建て
造園:荻野寿也景観設計
設計者自邸
見学予約可能事例:予約フォームへ

小さい敷地でもしっかりとした庭を作り、屋内の様々な場所から庭や木が見えるというのがメインコンセプトです。

敷地内の植物以外にも、西向かいの植裁や東のアパート裏のちょっとした植樹帯なども借景として楽しめるように窓の位置を検討しました。

容積率から35坪強まで建築可能な敷地ながら、延床面積で25坪と狭小と言える程ではないものの戸建てとしてはコンパクトな面積に抑え、その分内容を充実させて屋内空間は玄関、トイレなども含め全てを居室としてフル活用するくらいのつもりで設計しました。

家族が集まれる場所としてのリビングや可動式の小上がりがあり、少し距離を取りたいときは踊り場のベンチや玄関のソファをはじめとする各所で読書をしたり植物を眺めたり楽器を演奏したりと思い思いの過ごし方ができるようにしています。

現時点では間仕切りとなる扉はトイレと脱衣室の2箇所しかなく、離れた場所にいてもお互いの気配は感じられる距離感となっています。

小さな面積でも窮屈に感じないように、視線を遠くに飛ばすこと、また、緩い仕切りをところどころに設けることで奥行き感を出すことなどで印象を操作しています。

意匠面では、1階は少し薄暗く落ち着いた雰囲気、2階を明るく暖かい雰囲気として、気分によって居場所を選べるようにしています。

また、左官の天井をきれいに見せたいという思いがあり、極力天井に機器類を設置せず、照明もダウンライトは使わずになるべく天井も照らす計画としています。

性能面では構造は耐震等級3相当の設計をしており制振ユニットも導入、断熱は外断熱でHEAT20のG1基準を満たし(UA値0.54、ηAC値2.7、ηAH値3.2)低炭素建築物の認定を取得しています。

各室説明


外観
ファサード

通りに面する窓は玄関引き戸を含めて庭、木、周囲の借景への視界を確保する目的で大きさと位置を決めました。

また、通りから見た時に外壁が樹木の背景となるように、2階の壁面は開口を最小限に抑えています。

ポーチ

2階を道路に向かって跳ね出して玄関前のひさしを深く取ることで、雨の日にも濡れずに身支度等ができ、玄関引戸を全開にすると、ポーチを玄関から続く半屋内的な感覚で利用できます。

ポーチの袖壁は玄関引戸が延焼ラインから逃げるための防火壁も兼ねているため、玄関引戸は防火設備とする必要がなく一般的な製作の木製建具としてコストを抑えています。

ポーチに設置した机は帰ってきた時の荷物置き場の他、椅子を持ってきて仕事をしたり本を読んだりといった使い方もできます。

夜にはプリーツスクリーンを閉めることで通りに対する行灯のような柔らかい光を落とします。


玄関
玄関とカーテン

玄関からポーチ

玄関

玄関は単に靴を脱ぎ履きする場ではなく、前庭を見たり簡単な接客をしたり、将来的にはピアノを置いてスタジオを含めて音楽スペースなどとしても利用したいと考えました。

玄関ポーチから続く壁は外壁仕上げをそのまま中まで引き込み、軒裏の高さも天井と合わせることで、玄関引戸を開け放した時にポーチまでが一体空間として感じられます。

行き止まりの私道沿いで近隣住民以外はほとんど人通りが無く人目はほとんど気にならないので、リモートワークが多くなった現在ではポーチに設えた机で外の空気を感じながら仕事をしたり、ご近所との井戸端会議をすることもあります。

玄関照明

ペンダントライトは引掛け部分を天井内に隠し、すっきりした印象にしています。

玄関(夜)

玄関(夜のカーテン模様)

夜は外灯とポーチ灯の明かりがグリッド状のカーテンを通して内部にやや宗教的な模様を作り出します。

広い玄関は何かと便利で、保育園に行く前の歯磨きの場になったりすることもあります。

スタジオ
踊場とスタジオ

スタジオから庭を見る

階段踊場の下を土間レベルからさらに一段掘り込んで天井高さを確保し、庭を見ながら楽器や運動を楽しむスペースとしています。

2階でテレビなどを見ていても空間としてつながっていながら、ぎりぎりお互いの音が干渉せずに許容できる距離感となっています。

玄関収納 / ワークスペース
クロフィス / cloffice

当初の計画ではこの場所はあくまで玄関収納で、一応パソコンを置いてはあるもののここで長く過ごすつもりはありませんでした。

着工してからコロナ禍でリモートワークが多くなったこともあり、ここで過ごす時間が多くなりそうだということで玄関に向けて小さな開口を設け、仕事中もここから庭や来客の様子などがわかるようにしました。

座ったときの目線の高さで窓も設けてあるので居室としてもそれほど閉塞感はなく、適度に静かで集中するには良い場所となっています。

ワークスペースから玄関を見る

ワークスペースからの眺めです。庭とポーチの机が見えます。

階段

階段前には外から帰った時とトイレ用を兼ねる手洗いを設けています。

スリット状の窓で目線を切りながら明かりを確保し、釣棚の釣竹に見立てた銅管を蛇口にしています。

階段を1段上がると子供でも手が届く高さとなっていて、帰宅時にスムーズに手洗いができるようにしています。

1階から踊場へ

2階の開放感とのコントラストを強めるために、登り始めは両側の壁を屹立させて谷底のような印象を与えるよう計画しています。

階段板はオークの無垢材で、接合部分はノンスリップ目地に隠して継ぎ目が感じられないソリッドな印象をもたせています。

踊り場のライブラリー

踊場は玄関とリビングを繋ぐ場所として、本棚と読書スペースとなるベンチを設えています。

ベンチからリビングへの抜け道は本棚の今後への余裕兼子供の遊び用として設けたましたが、リビングにいる人と物を受け渡すのにも重宝します。

また、これは生活を始めてから気づきましたが、2階から1階まで降りずに柵越しに玄関にいる人に物を渡すという利用機会が多いです。

踊り場から見下ろす

降りる時は少し薄暗い中に降りていくという感じで、静かな空間に向かって気持ちを切り替える装置のような意図してますが、子供には効かないようです。

階段からルーフデッキ

踊場から上は2階の明るい空間が感じられます。

リビング・ダイニング・小上がり
小リビングからルーフデッキを見る

小リビング

階段を登ると正面にベンチ越しのルーフデッキがあり、その手前に小さなソファのある小リビングスペースがあります。

デッキがリビングより1段上がることで少しこもった感じが生まれ、ソファをルーフデッキに向けてデッキ前のベンチをオットマンのように使って外を見ながら過ごすこともできます。

ルーフデッキを2階の床より高くすることは階高を抑えることにも繋がり、建物の高さも低くなるためにコストを抑えられたり建築基準法の斜線対策が容易になるという側面もあります。

小リビングから踊場2

階段を登って振り返ると、リビングと小上がりの目隠しが見えます。

適度な高さを持った目隠し板が1枚あることで奥行き感が生まれ、階段を含めても15畳程度の空間ながら実面積以上の広がりを感じます。

ダイニングスペース

小リビングの前はダイニングスペースです。

天井の勾配は冬至の頃のトップライトからの太陽光の角度と合わせています。

あまり冬が好きではないので、家にこもっている時にちょっとした楽しみを見つけるための工夫の一つです。

子どもは気ままに好きなところで過ごしますが、窓前のベンチは作業台として使われることが多くなってます。

ソファで読書などする時は西側の大きな壁に守られているような感覚があります。

小上がり

リビングから1段上がって取外し可能な家具的なつくりの小上がりがあり、ここでゴロゴロしながらテレビを見たり、来客が寝泊まりしたりできます。

トップライトで明るさの確保と熱の排気を行い、壁面に窓を設けないことで落ち着いた空間となっています。

小上がりからルーフデッキを見る

小上がりからもルーフデッキと庭木が見えます。

小上がり

床柱的なイメージで設置した丸鋼は袖壁の補強が主目的ですが、手はつりの丸柱と対になり垂直方向を強調する役割も担っています。

南側はお隣の家がすぐ近くにあるためにリビングには南に面する窓を設けていませんが、トップライトと東西の窓から一日を通して充分な明るさは確保できています。

西窓から見る庭木

西側の窓からは前庭のアオダモ、コハウチワカエデの他に向かいのお宅の植裁も楽しめます。

キッチンとバルコニー

リビングから見るキッチンとルーフデッキ。

キッチン入口の上のルーバー内にはエアコンと給気口、照明が設置されている。

キッチン
キッチン

キッチンからバルコニー

キッチンは天井を低めに抑え、ルーフデッキに面する天井までの窓を設けて視線を外へと誘導しています。

ルーフデッキの壁を高く立ち上げることでお隣の目線を切り、同時に植裁も映えやすく、外の変化を楽しみながら気持ちの良く台所仕事ができます。

竣工時3歳の子供がおり、このくらいの子育て時期に家を建てる方々の多くがリビング全体を見渡せるような対面キッチンを要望されておりましたが、このように台所仕事時は子供は横目で見えるくらいにしておいて外を見てリフレッシュするという選択肢もありかと思います。

窓の高さや天井高さは主にタイルの割付をベースに決めています。

キッチン袖壁

シンクが丸見えにならないように設けた袖壁は角を丸め、少し遊び心を出してふきんなどを掛けられる丸穴を開けています。

キッチン作業場

キッチン作業場2

キッチンの後ろは家電等の収納と作業場になっていて、もともと持っていた古い作業台を使う前提で設計しています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

いわゆるキッチンバック収納は設けておらず、食器はキッチン脇のオープン棚によく使うものを入れ、使用頻度の低いものと繊細なものはダイニングのキャビネットに収納、調理器具と食品ストックはシステムキッチンの引き出しに納めています。

キッチン奥は子供室になっています。

子供室
子供室1

子供室は塗装用クロスを貼り、当面は落書きができる壁となっています。

取外し可能なJパネルからブランコや鉄棒を設置しています。

入り口は将来的に扉が設置できるよう引き戸レールを付けています。

子供室から見るヤマボウシ

子供室の窓からはバルコニーの花ブロックと奥庭のヤマボウシがよく見えます。

ルーフデッキ
デッキと木と花ブロック

ルーフデッキの南側は壁を立ち上げ、お隣とお互いに気にならないようにしています。

リビングから壁面が連続しているような雰囲気も出るので、上部に渡した桟にすだれなど掛けると半屋内のような風情になります。

ウッドデッキを防水面から30cm弱高く設置しているので、FRP防水をしっかり立ち上げた状態でも水切りが隠れてすっきりとした印象となっています。

東側は賃貸住宅でどのような人が住むかわからないこともあり完全に目隠しをすることで逆に不安になる可能性を考慮し、孔の空いている花ブロックを積み適度な目隠しとしています。

バルコニーから奥庭を見下ろす

奥庭を見下ろすことができる。

寝室
廊下

玄関から見た廊下の奥が寝室となっています。

短いながら廊下を挟むことでプライベートなスペースを分けています。

寝室は24時間換気をしていてもどうしても空気がこもりがちで匂いなどが気になるため、思い切って扉は設けていません。

そのため、洗面脱衣室とスペースをオーバーラップさせることができ、面積の節約になっているのと、家の端から端まで視界が通るために狭さをあまり感じずに済みます。

また、廊下が真っ暗にならないので照明の設置も不要で、細かいコスト削減にもつながっています。

1階全体の床をタイルとしていますが、これは狭い面積で水周りとそれ以外の部屋の床素材を変えない方がスッキリ見えるという意匠性と、蓄熱暖房があるため冬は暖かく夏はひんやりするという実用性が合致したための選択です。

コスト的にもタイル面積がある程度大きいとちょっといいフローリングを張るよりも安くできるというメリットがあります。

寝室と庭

寝室は奥庭に面していて、当初は床から天井までの掃き出し窓を設置予定でしたが、防火設備でかつ網なしガラスにしようとした時に高さの制限があり、網を入れて全面開口にするか、上下どちらかに寄せて網なしにするかの選択となりました。

結果的にやはり植裁を見るのに網がない方が良いと判断し、天井に対する光の入り方を優先して天井に寄せて床から立ち上がりをつくりましたが、この立ち上がりが結果的に寝室としての安心感のようなものをもたらしました。

子供が枠に座って本を読んでたりするのでちょっとした実用性もありました。

寝室

布団が接する壁面は左官だと布地が痛みやすいため桐ボードとしています。

照明は壁面のブラケット照明一つで、本を読む時以外は問題ない明るさが確保できますが、読書時はスタンドを併用しています。

奥庭と鎖樋

奥庭は少し和の趣が強いこともあり、ベランダからの排水に鎖樋を用いています。

洗面、浴室、トイレ、クローゼット
トイレ手すり

トイレには、以前暮らしていたマンションに付いていた手摺が思いのほか重宝していたために手摺兼紙巻器を鋼管で製作しました。

照明は奥の棚に置いたスタンドがセンサーで点灯します。

換気扇は棚の扉の奥に設置してあり、コンセントも便器の後ろに隠し、雑然としたものが見えないために静かな気持ちで籠もれるスペースになっています。

トイレドア

トイレの鍵は表示錠を子供が外から開けることを覚えてしまい一時的なことでしょうが煩わしいことと、一般的な鍵は開いているか閉まっているかが一目でわかりにくいこともあり、閂方式としています。

洗面脱衣室は引き込みの大きな扉で仕切れるようになっています。

洗面台とその前の壁はモルテックス、浴室内の壁は床と同じタイル貼りとしています。

洗面から浴室

浴室はカーテンの仕切りとしていて、利用時以外はカーテンを開け放すことで広々とした空間となり、湿気がこもりにくいという利点もあります。

天井は全て左官でつなげ、部屋同士の一体感を高めています。

基礎蓄熱暖房があるため浴室暖房乾燥機は設置せず、浴室の換気扇は奥の織り上げ部に設置してスッキリと仕上げています。

浴室から庭

浴室や洗面脱衣室からも庭の緑を楽しめます。

クローゼット

寝室の隣はクローゼット兼洗濯室で、この中からも庭が見えるような開口を設けています。

1階のエアコンはここにしか設置しておらず、開口は涼風の吹出口も兼ねています。

隠し事

見えなくて良いものはなるべく隠すことで全体の印象が整然とします。

部分部分は細かいことですが、塵も積もれば山となるように、不便さとのバランスを考えつつ隠せるものは隠しています。

メディア棚

リビングのテレビ上は子供に触られたくないものや雑然とした配線、メディア類を納める棚となっています。

テレビを窓に見立て、庇のようなイメージでつくっていて、テレビの大きさとのバランスを考えて棚に厚みをもたせ、コンセントや給気口などを厚みの中に納めています。

引っ掛けシーリングを隠す

玄関とダイニングの引掛シーリングボディは天井からオフセットさせて接合部が気にならないようにしています。

コンセントの場所

センサー

コンセント、スイッチ、センサー類はなるべく死角になる場所でかつ知っていればそれほど不便ではなく使える場所に設置しています。

インターフォン

あまりプラスチック製品を見たり触ったりしたくないという思いがあり、ドアホンはアルミケースを用いて隠しています。

結果的に本体の寿命も長くなるのではないかと密かに期待しています。

インターフォン

インターホン屋内側は直接玄関に出てしまうのでほとんど利用することがなく、サッシ脇の収納棚の奥に設置して一応ベンチに座ると利用できるようにしています。

ブラインド

ブラインドやサッシの框は基本的には隠していますが、ショールーム的意味合いで比較できるように寝室は露出で設置しています。

換気扇

換気扇、給気口は多少メンテナンス時の面倒さはありますが、頻度が少ないので極力見えない箇所で設置しています。

壁の構成

小上がりや踊場などにいる時などに、なんとなく気配は感じるが見えないという感覚を重要視して棚や壁の高さを設定しています。

だいぶ長くなりましたが、設計の過程など、さらに細かいことなどはブログ
https://ekip.co.jp/blog/archives/category/myhousedesign
にまとめていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

仕上げ
1階:壁天井 左官(ムラモト ウォーロ)、一部壁と床 タイル(マリスト ワン)、一部壁 桐パネル(ウッドテック)
2階:壁天井 左官(ムラモト ウォーロ)、子供室のみ壁天井 クロス(ナガイ)、キッチン壁 タイル(平田タイル)、床 フローリング(岡崎製材)

設備、照明
衛生機器:TOTO(便器)、ウッドワン(キッチン)、フォンテトレーディング(浴槽、シャワー水栓、手洗器)、Tform(洗面器、混合水栓)
照明機器:FLOS、Louis Poulsen、ひかり、DAIKO、コイズミ、BOCCI
暖房機器:モア(基礎蓄熱暖房)
制振ユニット:神栄(S Plus)

気配と見通し すくすくリノベーションvol.15

<概要>(リノベーション)
場所:千葉県松戸市
面積:床面積72㎡
構造:RC造
※施主設計の事例

ご夫婦とお子様のためのマンションリノベーションです。

ご夫婦は共に建築に携わっており、ご自身で基本計画をまとめたものを弊社が実施図を書き施工するという珍しいパターンで計画が進みました。

全体的な間取りの大きな配置は変わっていないものの、微妙な寸法調整が多く、ほぼフルスケルトンにしてからのスタートとなりました。

元々は3LDKのプランで、平面図をぱっと見てもあまり変わっていないように見えますが、居室部分は全て完全な間仕切りをされていない状態に変更されており、常に家族の気配が感じられるようになっています。

小さなお子様の成長とともに寝る場所や間仕切りが少しずつ変わっていくような計画です。

まずは元のリビングダイニングの360度画像を御覧ください。(マウスで視線が移動します)

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このマンションは幅広のベランダからの眺望がよく開放感が魅力です。
しかも南北両面に窓があるため風の抜けも非常に良いです。
元の状態でもその片鱗はそれなりに感じられますが、さらに開放感を強めるために南窓側は東西方向に突き通すというのが今回の計画の骨子になっています。

リビングダイニング

リノベーション後のリビングダイニングです。
奥の窓までが見通せることで明るさと広さの感じ方が大きく変わっています。
また、このような飛び石の窓で眺望を活かすにはカーテンよりブラインドの方が窓同士の連続感を強めやすいです。
10cm弱ですが天井も高くなっております。

プリーツスクリーンを閉める

壁と天井は左官で、入隅のRを大きめに取ることで柔らかい雰囲気になっています。

土間スペース

和室の南側に土間スペースを取ることで外縁のような雰囲気になっています。

土間スペースからの見通し

土間からワークスペースまでを見通すと空間の長さを実感できます。

小上がり

小上がりは床から40cm程度上がっているため、天井を躯体表しにして窮屈さを緩和しています。

小上がりから外を見る

小上がりに座って外を眺めると気持ちの良い緑が感じられます。

小上がりからリビングを見る

リビング側の入り口は躙口のように高さを抑え、リビングから籠もれる感覚を与えています。

小上がりの様子

小上がりの下は奥行きのある引き出しになっています。

キッチン

キッチンのレイアウトは元とほぼ一緒ですが、明るい色に変えることで勝手口からの光の反射が活かされています。
レンジフードは既存のものに塗装しています。

元のキッチンの360度画像です。

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デッキとのつながり

ベランダにはウッドデッキを設置して室内との段差を減らしリビングとの一体感を増しています。

デッキ

これだけ長さがあるとウッドデッキの存在感も増し、ベランピングも楽しめそうです。

ワークスペースからの見通し

ワークスペース側からの見通し。
リビングとの仕切りは本棚になっています。

ワークスペースと寝室

ワークスペースと寝室の仕切りはプロジェクターのスクリーンにもなるロールブラインドを採用。

寝室からワークスペースにかけて、戸境壁に沿って大容量のクローゼットを設けています。

ニッチ

パイプスペース周りの凹凸を利用してニッチを設けています。

玄関

玄関は元々付いてた下駄箱を撤去してカーテンの向こうに玄関収納を設けてすっきりとさせています。

洗面脱衣室

洗面脱衣室はコーリアンのボウル一体型カウンター。ミラー収納は既製品ですが、周囲をタモ材で囲って整えています。

パノラマ “12400” すくすくリノベーションvol.14

画像はクリックで拡大します


<概要>(マンションリノベーション)
場所:東京都
面積:床面積102㎡
構造:RC造

お住み替えのため、新たにマンションをお探しのお客様。
不動産の仲介からリノベーションまで、弊社のワンストップサービスにてお手伝いさせて頂きました。

ご夫婦と小さなお子様、3人のためのリノベーションです。

南面は道路に面しており、大きな開口面積によって都心にありながら、大パノラマを得られる環境でした。
リノベーション以前の間取りは、個室が多くお部屋のもつ魅力を生かし切れてないように感じました。
個室に分割していた間仕切り壁を撤去。長手寸法、約 “12400mm” の大きなLDKにリノベーション。
連窓からのパノラマを最大化し、たっぷりお日さまを取り込める、明るいお部屋になりました。

また、LDKから洗面脱衣所へ直接アクセスするため、出入口を極力目立出せないよう、壁と同じ面材を採用。
隠し扉のように製作しました。古くなっていた住設機器を交換し、浴室は元のサイズより大きな
ユニットバスを採用。LDKの一番東側のスペースは、可動間仕切りで個室のようにも利用できます。

LDK
当面は広々と使いたいとの要望に合わせ、当初、LDKの他に2部屋設けられていた個室の間仕切壁を撤去。
窓の多い、非常に明るいLDKとなりました。また、梁下の飾り棚は、木材を張った壁との見切も兼ねています。
正面右側の壁には、セルジュ・ムーユのブラケットライトを設置しています。

梁下棚のリビング側には、奥行きを30cm程度確保し、書籍・雑誌などの収納スペースとしました。
棚下の材はラワン無垢材の羽目板を張っています。
壁にはニッシンイクスのリアルパネル、タモ柾目ヘリンボーン合板を張り、LDKのアクセントとしています。

個室側からみた、LDKのBEFORE AFTERです。
右側に見える収納式可動間仕切りで、個室として使用することも可能。
来客時の対応スペースとして、将来的には、子ども室として使用することを想定しています。


また、窓際の天井には、ご主人からの要望であるスチール製の雲梯を設置しています。
大人がぶら下がっても問題なく使用できる強度をもたせています。

閉めた際には、戸尻側の引戸から出入りします。
建具自体は当初、個室3に設置されていた4枚引戸を移し替え・再利用しています。
FIX部分の3枚引戸には、フランス落としを設置し、それぞれ固定できるようにしています。

洗面脱衣所への扉は隠し扉のように製作。
リビングと洗面脱衣所が隣接するため、壁と建具に張った合板の柄を合わせ、建具のラインを
極力意識させないように計画しました。

把手は埋め込みの製品を採用。扉、壁の小口には、無垢材を張り保護しています。

洗面台BEFORE AFTER
洗面台はフロートタイプの家具を製作。正面左側のオープン棚は、移設した4枚引戸の戸尻裏
デッドスペースを活用して、奥行きの大きな棚としています。
正面のタイルは、SUBWAY CERAMICSのタイルを張りました。

寝室の一角にはWICを設置。奥には元々大きなクローゼットが備え付けられていますので、製作した
手前のWICには、季節ものの洋服などを入れ替えて使用する想定です。

トイレにはお客様に選定頂いた、ウィリアムモリスのアクセントクロスを張っています。
当初、斜めに設置されていた便器の向きを変え、新しい機器に交換しています。
手洗器は当初のままですが、広々とした印象のトイレになりました。

褪光の家 すくすくリノベーションvol.13

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<概要>
場所:千葉県市川市
面積:床面積88㎡
構造:RC造

ご夫婦とお子様のためのマンションリノベーションです。

低層マンションの1階角部屋で、4LDKだったものを将来子供室を増設する可能性を残した遊び場付き2LDKとしました。

落ち着いたインテリアをお好みで、小さなお子様がいるもののあまり子供っぽい要素は入れず、素材感を大事にした計画となりました。

物件は直床のため、水回りの移動と天井高さの確保を両立するのが難しかったのですが、キッチンの排水を軸に90度回転させることでリビング・ダイニングスペースが拡張でき、キッチンからも全体が見渡せるようになりました。

また、元のリビング・ダイニングは3方が窓に囲まれており少し落ち着きに欠けるため、西側の通りに面した窓を一つ隠蔽して大きな壁面をつくり、リビングに安定感をもたらしています。

キッチンの変更に合わせて洗面脱衣スペースも拡張し、玄関からリビングが丸見えにならないようなレイアウトとなっています。廊下突き当りの曲面の壁は洗面脱衣室内の通路の確保とLDKからの光を廊下に反射させる2つの役割を持っています。

内装は落ち着いたグレーのクロスとポーターズペイントを主体とし光が拡散していくようなマットな空間に、ところどころに真鍮の金物が鈍く光ります。

南面(写真左手)はほぼ前面が窓ですが、レースのカーテンが柔らかい光を部屋に拡散します。正面とキッチンバックの壁は施主施工によるポーターズペイント。元々は梁型や柱型で結構がたがたしていたのですが、要素を整理し極力線を消して落ち着きをもたせました。

上の写真のアングルでのビフォア・アフターです。

LDKの奥に将来子供室となることも見据えた遊び場があります。大人っぽい空間ながらも庭と一体でのびのびと遊べるスペースになっています。左端のドアは廊下からの入り口で、その隣の壁に馴染ませたドアは洗面脱衣室の入り口です。

キッチンからは全体が見渡せます。正面のエアコン横はエアコンの配管の隠蔽と柱型の存在感を減らすための措置として収納を設けていますが、扉も壁に馴染んでいるためその存在にはなかなか気づきません。

施主施工のポーターズペイントの壁の素材感がチークの家具とよく合っています。

遊び場から外に出ると水場があり、夏はプール遊びなどもしやすい環境になっています。

キッチンバック収納はタモの突板に塗装ですが、単純なリピート柄を避け板目と柾目を交互に張り合わせる少し手間のかかる仕様になっています。冷蔵庫は正面の窓の左手に入れて存在感を消しています。

洗面脱衣室はラワンをベースとし、既製品の洗面台とも一体感が出るように考えました。

廊下に面する建具は既存のものですが、壁より少し濃いグレーに塗装して全体と馴染ませています。廊下の照明は玄関上部に設けた間接照明だけとして天井をすっきりとさせています。

玄関のビフォア・アフターです。元のようにリビングまで見えるようにすると明るさは取れますがプライバシー的にはあまり好ましくありません。どちらを取るかはケースバイケースですが、今回はプライバシーを優先したプランとなっています。曲面の壁にリビングからの光が当たり、その先の明るさを暗示しています。

団らんの様子をちょっと隠し撮り。玄関から丸見えにならないことで常にプライバシーが保たれた状態のリビングではよりリラックスしやすいのではないでしょうか。

余談ですが、タイトルの「褪光」は昨年の上海視察時に目にした中国語で字面が気に入っていたのですが、艶消しの意味なので今回の事例にちょうどよく採用となりました。

1・2・house (子育て世代の家づくり)

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12house ファサード<概要>
場所:東京都世田谷区
面積:延床面積137㎡
構造:木造3階

ご夫婦とお子様3人のための戸建住宅。

ご要望は「玄関土間と外部が一体として使える空間」「キッチンから子どもたちとコミュニケーションが取れるレイアウト」「上下階の移動を楽しく」「食堂のようなキッチン」などと具体的なものが多くありました。

そこで、玄関から3階まで仕切りを無くしシームレスな空間とし、どこにいても顔が覗くことができ、家を外部に開放させ街に対してボーダーレスな繋がりをもてる建物構成としました。地域との結節点として、内部と外部との境界があいまいな「外食堂」と「前庭」を介して、ゆるやかに開かれた「場」を作り、住宅地内のコミュニティが広がるきっかけになればと考えています。家の前を通る近隣の人から建物をきっかけに会話が生まれていて、地域へすんなりと馴染むことが出来、家族同士のコミュニケーションも増えているようです。

また、北側道路の南北に長い敷地に対して、南側の吹き抜けに面して大きく開口を設け、そこから3階や2階の各部屋に光を取り入れ、また軒を出して冬場は各部屋の奥まで明るく、夏場は直射日光を避け、反射による明るさを確保しています。家全体のヌケが良いことと断熱性の確保で夏場でもエアコン1台で過ごせる省エネ住宅でもあります。

12house LDK

リビングダイニングとカウンターキッチン。中央には吹き抜けを突き抜けているはしご。勉強コーナーから柔らかな光が注がれます。

12house 階段

3階への階段と勉強スペースへの階段。

12house キッチンから勉強スペースを見る

キッチンからは勉強している様子が見えます。

12house キッチン

キッチンを囲んでの団らん。

12house 勉強スペース

中3階に位置する勉強スペースからはLDKを見渡せて、かつ個々のスペースへのアクセスも可能です。

12house 勉強スペースから3階

勉強スペースから個々のスペースを見る。

12house 勉強スペースからキッチン

勉強スペースからキッチンを見る。

12house 個室から勉強スペース

3階から勉強スペースを見下ろす。

12house 個スペース

3階の間仕切りがない「個スペース」はそれぞれのカラーが。

12house 個スペースに並んで

3者3様の過ごし方をしてます。

12house 3階登り棒

2階から3階への登り棒。

12house 登り棒見下ろし

みんなで掴まった様子。

12house 寝床

2階LDKに面した寝床が当面の寝室代わりです。

12house 玄関書斎

玄関は書斎も兼ね、外部との一体感もあり第二のリビングとなっています。

12house バルコニーからロープ

バルコニーから玄関ポーチにはロープで降りることもできます。

12house ファサード夕景

夕暮れ時、外食堂と化したバルコニー。

12house LDK夕景

LDKの夕景。

12house キッチン夕景

キッチン側の夕景。

12house 玄関ポーチ

玄関ポーチは遊び場と駐輪場に。

12house 玄関夜景

玄関は夜通りから丸見えになるため、やっぱり竣工後にカーテンが追加されました。

12house バルコニー

バルコニーは2層分の高さの屋根と大きな壁面のおかげで通りに開きながらも不思議な落ち着きを感じます。

素因数の家 すくすくリノベーションvol.11

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マンションリノベーション プラン<概要>
場所:東京都狛江市
面積:床面積68㎡
構造:鉄筋コンクリート造

ご夫婦とお子さま1人のご家族のためのマンションリノベーションです。築33年でぎりぎり新耐震と思われ、専有部の面積は68平米と広くはありませんが、ルーフバルコニーが約55㎡あり、南西に抜けの良い景色が広がる物件です。

プランニングのポイントは、4人家族になることも見据えた部屋割りと、なるべく大きく明るいLDKスペースを確保することでした。限られた面積の中で本当に必要なものを見極め、スペースの掛け合わせで複数の将来的可能性を持つプランを考えました。将来子ども室となるキッズスペースはLDKの一角に設け、引き戸と可動間仕切りで個室に出来るようにしています。また、寝室と書斎は収納で仕切られてますが、状況に応じて収納を外すと一室にもなりますし、そのまま書斎を子ども室として使うことも可能です。

マンションリノベーション LDK

LDKとキッズスペースです。床とキッチン腰壁はオーク、壁は左官であたたかみのある空間となっています。

マンションリノベーション LDK

テレビはダイニング越しに見るスタイルとすることで、リビングスペースにゆとりが生まれています。

マンションリノベーション キッチンから

キッチン側からはキッズスペースを含めた部屋全体が見渡せます。

マンションリノベーション キッズスペース

ソファの裏側のスペースはキッズスペースと合わせてお子さまがゆったり遊べる空間となってます。キッズスペースの奥の壁だけワンポイントで輸入クロスを貼っています。

マンションリノベーション キッチン

キッチンはオールステンレス製で、収納スペースはオープン棚のみ造り付け、時期に合わせ自由に変えていけるスタイルとなってます。

マンションリノベーション ベンチ

腰壁やダイニングテーブルとマッチしたベンチはご主人がDIYで造ったものです。

マンションリノベーション シューズクローゼット

玄関はオープンタイプのシューズクローゼットと一体になってます。

マンションリノベーション 廊下

廊下は雁行しているためリビングが丸見えになることはありません。奥の収納扉は杉板を貼っています。

マンションリノベーション 書斎

書斎へは土間を通ってアクセスします。床はOSBボードです。

マンションリノベーション ドア

廊下からLDKに入るドアからは光が漏れ、明るい空間へと誘われます。

マンションリノベーション トイレ

トイレは奥の壁と天井をオーク張りにしています。

マンションリノベーション 床のディテール

異素材組み合わせのディテール。オークの床と塩ビタイルの見切りは真鍮。

マンションリノベーション 下足入ディテール

下足入の棚板は無垢の杉足場板。

マンションリノベーション 左官ディテール

壁の左官は光が当たると表情が豊かになります。

キッズスペース開閉のようす
キッズスペース開閉のようす2
間接照明
LDKビフォーアフター
書斎ビフォーアフター
洗面脱衣室ビフォーアフター

蝶の家 すくすくリノベーション vol.12

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蝶の家<概要>
場所:東京都目黒区
面積:床面積130㎡
構造:RC造

賃貸マンションの2住戸分を一つにまとめてリノベーションした事例です。

元々の各住戸の玄関前のスペースを新しい玄関として屋内化し、西側の日当たりの良かった住戸をLDKとキッズスペースに、東側の住戸をプライベートな個室と水周りに割り振りました。

一般的なリノベーションと異なり設備配管やメーター類をどうするかなども考慮する必要があったのは今回の計画で得た新しい経験でした。

また、施工面積が大きく費用が膨らみがちなので、玄関からLDKにかけては左官の壁、オークのフローリング、ラワンの天井など自然素材をふんだんに使いながらも、個室側は既存の間仕切りを活かすようにするなどコストのバランスを調整しながらのプランニングとなりました。

蝶の家 LDKLDKを大きく印象づけるのは、机とベンチとTV台を兼ねる長い収納家具です。この家具に正対して部屋の中央にキッチンがあり、空間全体を見渡すことができます。

LDKの照明
LDKビフォーアフター
LDKビフォーアフター

蝶の家 キッチンからの眺めキッチンからダイニング方向

蝶の家 キッチンキッチンの裏にはパントリーがあります

キッチンのキッズスペース側には簡易な侵入防止の扉があります

パントリーキッチン裏のパントリー

蝶の家 レゴスペースキッズスペースにはお子様も片付けがしやすい棚を設け、一部の壁はレゴベースと黒板になっています。引き出しはイケアのトロファストを自由に組み合わせて使えるようにしています。

蝶の家 ボルダリングと雲梯ができるキッズスペースR壁の裏側にはボルダリングホルダーと雲梯を設けています。

キッズスペースビフォーアフター
玄関ホールビフォーアフター

玄関には元のメーターボックスがあり、取り外し式のラワンのパネルで覆っています。水道とガスメーターは新しい玄関の外に出しましたが、電気メーターはスマートメーターなので元の位置に収まっています。

玄関ビフォーアフター
寝室ビフォーアフター

寝室は一部斜めの壁があるためヘッドボードと収納として利用しています。

蝶の家 ウォークインクローゼットウォークインクローゼットは元々LDKの一部で東向きの窓があるため朝の着替えの時は明るい空間になります。

洗面脱衣室ビフォーアフター

洗面脱衣室はL型の造作カウンターとして一部をアイロンスペースとしています。アイロンや洗濯後の衣類をかけられるようにパイプを設けています。浴室を窓付きにしたことで洗面脱衣室にも浴室からの光が入るようになり以前より明るくなっています。

望楼の家 すくすくリノベーションvol.10

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港区のマンションリノベーション プラン<概要>
場所:東京都港区
面積:床面積99.7㎡
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造

ご夫婦とお子様4人の大家族のためのマンションリノベーションです。物件は築14年とそれほど古くはないものの、前オーナーがヘビースモーカーだったようで内装から設備まで全て黄色く変色した状態でしたが、大部分を下地から交換して以前の名残は全くなくなりました。

プランは、部屋の配置自体はそれほど変えてませんが、収納力アップと現在の使い勝手から将来子ども室を別個に設けたときまでの変遷を考慮した動線となっています。

将来的な子ども室は全てリビングアクセスとなりますが、そうするとリビングがドアだらけで落ち着きのない空間になってしまいます。そこで、2室分のドアはテレビボードと意匠的に一体化した、あたかも家具のような意匠としました。もう一部屋は当面はリビングと一体で使えるキッズスペースとし、ルーバードアで仕切ることで半個室、個室と必要に応じた空間設定が可能となりました。

リビングのハンモック、キッズスペースの吊りベッドからは高層階ならではの景色を眺めることができ、さながら望楼にいるような感覚が味わえます。

港区のマンションリノベーション キッズスペース

キッズスペースは遊び場の面積を増やす方法としてはしごで登る吊りベッドを設けました。一般的なマットレスなどは入りませんが、寝袋などを使えば寝ることも出来ます。写真右手の蝶が止まっている部分は壁内に鉄板を仕込んでマグネットが使えるようになっています。

リビングの窓側にはベンチを造り付け、団欒の場所としてだけではなくハンモックへの登り口として使われています。

港区のマンションリノベーション LD

リビングダイニングの配色計画は特注色のフローリングとテレビボードで落ち着きを出しながら、ブルーグリーンを差し色に使うことで明るさと楽しさが感じられます。

港区のマンションリノベーション ベンチと家具

キッズスペースから見たリビングです。写真中央部あたりが将来子ども室へのドアとなっています。

港区のマンションリノベーション ルーバードア

キッズスペースのルーバードアを閉めた様子。さらにルーバーを閉めると完全な個室となります。

港区のマンションリノベーション タイル

キッチン前の腰壁はレンガタイルを白く塗装しています。吊戸はリビング側とキッチン側の双方から使えるようになっています。

キッチンビフォーアフター

キッチンは元々がコの字型で非常に広かったのですが、冷蔵庫を奥に移動して2列型とし、収納を優先しています。以前はウォークインクローゼットと廊下の両方に出るドアがありましたが、ウォークインクローゼットを家族全員で使えるようにすることで動線を一本化出来ました。

港区のマンションリノベーション 将来子ども室

リビングから将来子ども室へのドアを開けた様子。リビングとは少々趣の異なる仕上げとなっていて、扉を開いたときに良い意味での違和感を感じられると思います。

寝室ビフォーアフター

将来子ども室は少し若々しい青をアクセントに使い、腰壁には杉板を張って白く塗装しています。リゾートっぽい清々しさが感じられます。

港区のマンションリノベーション 寝室

寝室にはヘッドボードを設けて寝かしつけ用の絵本などが収納できるようになっています。収納スペースを優先して面積は元より減りましたが、それでもダブルベッドを2台置ける程度の広さは確保しています。

洗面脱衣室ビフォーアフター

洗面脱衣室は洗濯機スペースを最近の大型機種も入る程度に広げています。ミラーボックスは非常に細いLED照明を扉の間に縦に仕込むことで三面鏡として使うと顔を隈なく照らすことができます。

トイレビフォーアフター

トイレは洗面脱衣室と意匠を合わせ、同じクロスとタイルを使っています。収納カウンターは既存のものに塗装をして、カウンターは磨きをかけてほぼ新品の状態となっています。

玄関ビフォーアフター

玄関タイルは既存のものですが、これも研磨処理できれいになっています。

玄関収納の電動自転車充電器置き場

玄関収納には鍵など小物を置けるスペースを設けていますが、内部を全て可動棚にしているため電動自転車の充電もできるようになっています。出かける時に充電池の持ち忘れが多いとのことでしたので、鍵の近くに置くことで防止策を講じました。

港区のマンションリノベーション 玄関から

玄関から見たリビングダイニング。入口のドアは鉄骨と木製のハイブリッドで、ガラスは雨のしずくをイメージしたデザインガラスを採用しました。

港区のマンションリノベーション ドア デザインガラス

ドアのディテール。写真をクリックするとガラスの雰囲気も感じられると思います。

LDビフォーアフター

わかりにくいですが、テーブル下にある穴はフロアコンセントになっています。使わないときも目立たないようにフローリングを加工したつくりになっています。

キッズスペース

吊りベッドは鉄パイプを曲げたはしごからアクセスします。外壁はライトブルーに塗装した杉板、内部はピンクベースの輸入クロスです。

港区のマンションリノベーション 景色

吊りベッド内部と眺め。床から浮いていることもあり、窓際から外だけを見てると浮遊感を感じられます。

港区のマンションリノベーション 夕景LD港区のマンションリノベーション 夕景 キッズスペース

照明をつけた様子。

将来子ども室への扉の開閉

テレビボードの全体意匠。テレビは壁掛けで壁内通線としています。テレビ下のガラス取っ手部分はレコーダー等へのリモコンアクセスが可能です。

港区のマンションリノベーション ディテール

テレビボードのディテール。面材はホワイトオーク天然木突き板で、工場で選別したものを目が合うように作っています。




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